DLPFC(背外側前頭前野)を活性化する鍼治療は、脳の鎮痛機構を正常化し、情動や自律神経をコントロールすることを目的に行われます。
そのため、適応疾患は**慢性疼痛から精神疾患、消化器疾患、代謝性疾患**まで非常に多岐にわたります。
主な適応疾患と症状は以下の通りです。
1. 慢性疼痛・術後後遺症
DLPFCは「痛みの回路」を抑制する指令を出す部位であるため、長引く痛みに高い効果を発揮します。
⚫︎慢性腰痛、ぎっくり腰
⚫︎慢性頭痛、片頭痛、むち打ち症
⚫︎幻肢痛(幻の痛み)
⚫︎反射性交感神経性ジストロフィー(RSD / CRPS)
⚫︎術後の後遺症・痛み:腹膜炎の後遺症(腹痛・腹部膨満)、股関節置換術後の痛み、上顎骨骨折の手術後の痛みなど
⚫︎原因不明の痛み:睾丸痛、前立腺炎による会陰部の痛み、胸痛など
⚫︎複雑骨折後の可動域制限や痛み
2. 精神疾患・情動の問題
DLPFCはネガティブな感情をコントロールする役割を担っています。
⚫︎うつ病、うつ状態
⚫︎パニック障害、不安発作
⚫︎睡眠障害(不眠)
⚫︎ストレス、恐怖、ショックによる精神的動揺
3. 消化器疾患
脳と腸は「脳腸相関」として密接に関わっており、脳へのアプローチが腸の改善につながります 。
⚫︎過敏性腸症候群(IBS)
⚫︎潰瘍性大腸炎、クローン病
⚫︎慢性的な便秘、下痢、腹部膨満感
⚫︎胃痛、胃もたれ、吐き気
4. 代謝・内分泌系疾患
DLPFCを含む前頭前野の機能低下は、自律神経や摂食行動の乱れを引き起こします 。
⚫︎メタボリック症候群
⚫︎2型糖尿病、耐糖能異常(高血糖)
⚫︎脂質代謝異常
⚫︎肥満
5. その他
⚫︎羞明(まぶしさ・光過敏)
⚫︎食物アレルギー
⚫︎慢性疲労症候群
⚫︎レイノー病、手足の冷え
⚫︎起立性調節障害
これらの疾患は、単独で存在するだけでなく、ストレスによる交感神経の過緊張や副腎機能の低下(腎の傷み)を背景として併発していることが多いのも特徴です。
出典 松本岐子: 鍼によるDLPFC賦活治療(1〜7)医道の日本社